アコヤ真珠のネックレスの卸販売では同じ品質のネックレスを数本~数十本一つに束ねて「ロット」という状態にして取引されています。
この「ロット」の作り方は当サイトの別記事「真珠のネックレスはこうして出来上がる。連組み作業を詳細に解説!」の中で、目次を見ていただき<ロットをする>という項目で詳しく説明しています。その記事にはビニールチューブの調達の方法は書いていませんので、ここで御紹介いたします。ビニールチューブは工業用のものを転用して使用しますので、一般のスーパーやホームセンターでは手に入れることができません。
ちなみにホームセンターの「コーナン」そして「ビニールチューブ」でネット検索すると、熱帯魚の水槽に使うチューブや、庭の水まきに使用するビニールホースなどが出てくるばかりです。
真珠のロットに使用しているビニールチューブは、工業分野で使われている絶縁ビニールチューブ「YKチューブ」というものです。
ではなぜ真珠のロット作成に工業用のビニールチューブを使うのか?その理由は・・・
こういう条件を満たす素材を探していくうちに「YKチューブ」にたどり着いたのです。
(この材料の選定については、私自身が探したのではなく、真珠業者の友人から教えてもらいました。)
YKチューブは適度なしなやかさを持っているので、ネックレスを束ねて「ロット」を作る際の結び目を作る作業が楽にできます。
またビニールの柔らかさとしなやかさで、作ったロットの結び目がしっかりとしており、容易にはほどけることがないです。業者間の真珠の取引の際に、もし真珠を束ねたロットからネックレスが抜けてしまうと、お客様に迷惑を掛けたり、トラブルになりかねません。
YKチューブで真珠を束ねるロット作業をすれば、出来上がった ロットの部分からネックレスが抜け落ちる心配は全くないです。 これはもっとも大切なポイントですね。
しかしまた、逆にロット作業で束ねられたネックレスの中から数本だけを抜き取りたいということも、取引の中で頻繁に起こります。その場合には出来上がったロットのビニールチューブの結び目のところを、両手の爪で強くつかんでほぐすことで、結び目をほどくこともできます。
結び目がほどけにくいだけでなく、いざとなればほどくこともできる、これがYKチューブの特性とも言えるでしょう。数本のネックレスを抜き取ってから再びビニールチューブを結べば、またネックレスが束となったロットの状態に戻すことができます。
ネックレスの本数が10本未満ぐらいの小ロットの場合はビニールチューブの内径は3ミリのものがちょうど良いです。ちょうど良いというのは、チューブの結び目で中に通っているネックレスの糸がしっかりと固定され、ネックレスがチューブから抜け落ちない、ということです。
しかしネックレスが10本以上になると、チューブの中に通す糸(20番手ぐらいのナイロン糸)の本数も20本以上となり通すのが難しくなってきます。そこでもう少し太いチューブを使う必要が出てきます。
かといって10本未満のネックレスに4ミリや5ミリの太いチューブを使うと、糸とチューブの間にできる隙間が大きすぎ、結ぶ目を作ってロット作業をしても、糸がしっかり固定されずにネックレスが抜ける可能性が出てきます。ですので束ねるネックレスの本数に応じてチューブの太さも変えていかなくてはなりません。
ネックレスの本数が10本以上の場合、ビニールチューブの太さはどういうものが良いかは以下の表を参照してください。
チューブに入るネックレスの糸の本数は、その断面積に大体比例します。ビニールチューブの内径と束ねるネックレスの本数の対応は以下の通りです。
束ねる ネックレス の本数 | 最適ビニール チューブの 内径(mm) | 100mあた りの価格 |
10本未満 | 3.0 | 1120円 |
20本未満 | 4.0 | 1450円 |
30本未満 | 5.0 | 1800円 |
40本未満 | 6.0 | 2130円 |
YKチューブはホームセンターなどの一般のお店には置いてないのでネットから購入します。アクセスするサイトは http://www.nasuden.net/page/ykc.html です。(株)ナスデンという会社が横山化成(株)製の「YKチューブ」を扱っています。
支払いは代引のみとなっています。「 3.0mm Φ ×0.4mm 透明、100m」なら1120円、かかる送料と代引手数料は合計で1500円程です。
ネックレスの端に伸びている糸をビニールチューブの中に通すには、V字型に曲げた針金が必要です。糸に針金を引っ掛けて、まず針金をチューブに通していくことで、すべての糸をチューブに通せるのです。
(V字型の針金の使い方は 「真珠のネックレスはこうして出来上がる。連組み作業を詳細に解説!」の中で、目次を見ていただき<ロットをする>という項目で詳しく説明しています。 )
針金と言っても普通の針金では作業をしているうちにすぐに変形してしまって使い物にならなくなります。そこで少々曲げても、また元通りの形に戻る性質のあるピアノ線を使います。ピアノ線を購入して30cm程の長さに切ってペンチを使って二つに折り曲げて使用します。
ピアノ線は東急ハンズやネットで買うことができます。私の場合は東急ハンズで買いました。太さは0.8ミリで長さ2m、値段は330円でした。2mのピアノ線があれば、このV字型に曲げた針金は6つ作れます。
ネットからは楽天やアスクルでピアノ線、0.8mmで検索すると(株)光製のピアノ線が240円程度で400mm5本入りで出ています。
私はロットの作業にはYKチューブが非常に適したものだと考えています。もし観賞魚用のエアポンプに使うビニールチューブでロット作業した場合,うまく行くかどうかを実際に購入して実験してみました。
写真のような観賞魚用のエアポンプに使うビニールチューブはホームセンター「コーナン」に行けば売っており、2m巻きで195円でした。
このエアポンプ用チューブはしなやかさがなく、肉厚が1ミリという厚さのために硬くて曲げるのが難しいチューブです。もともとエアポンプ用チューブは結び目を作ることは想定しておらず、むしろ折れ曲がりにくくなっています。
一方YKチューブは肉厚0.4ミリで簡単に結び目を作ることができます。
なんとか結び目を作り、ロットが出来た写真が上にある通りです。実際にエアポンプ用チューブでロット作業してみると、太いだけが問題なのではなくて、肉厚が0.4ミリではなく1ミリもあるので、硬くてなかなか曲がらないです。だからチューブに結び目を作ることはかなり難しかったです。
チューブを曲げたとき元に戻ろうとする力が随分強いので、チューブを結ぶことがなかなかできませんでした。ロットの形がくの字型に曲がっていて真珠のロットとしては見栄えが悪くなっています。
結局、エアポンプ用チューブがロット作業に向いていない点は次の3点です。
ちなみにYKチューブでロット作業したものは下のような感じです。
真珠ネックレスをロットに束ねるためのビニールチューブの種類、値段、そして調達方法について解説いたしました。
大きいロット用のビニールチューブの太さについても表にまとめました。通常は内径3ミリ、大きいロットなら4とか5ミリが良い。
ロット作業に必要な針金の種類と購入方法も紹介しました。針金は必ずピアノ線を使ってください。
これらをそろえることで簡単に真珠のネックレスをロットに束ねることができます。このロットの方法をまだ経験されていない方は、ぜひこのブログを参考にして試してみてください。従来のロットの方法と比べて、きっとああ楽だなと思われるはずです。