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真珠のネックレスはこうして出来上がる。連組み作業を詳細に解説!

真珠加工の仕事の中でも、熟練を要しネックレス製造のかなめとなる仕事は「連組み」作業です。この記事では連組みの仕事をやってみたいと思っておられる方に向けて、アコヤ真珠のネックレスは、どのようにして出来上がるのか、一つ一つの工程に分けて分かりやすく解説しています。

真珠のサイズをそろえる → 品質をそろえる → 連組み → 同じ品質のネックレスを束ねる(ロット作業と言います) 〈完成〉

このような流れになっています。それでは工程ごとに説明していきます。

最初の工程、フルイ分け

真珠のネックレスを作るには、両穴と呼ばれる貫通した穴の開いた真珠が必要です。しかもその大きさや品質がそろっていないと、きれいなネックレスを作れません。そこでまず最初にしなければならない工程が、真珠の大きさをそろえることです。いわゆる、フルイ(篩)分けです。

直径20cmぐらいのステンレスの枠の底に、たくさんの同じ大きさの丸い穴が開いた板をはめ込んで使います。

写真にあるような「フルイ」と呼ばれるステンレス製の器具で、真珠の大きさをそろえるのです。

例えば7.5x8というサイズ(7.5から8ミリ)のネックレスを組む場合なら、まず8mmのフルイで下に落ちた珠をもう一度、今度は7.5mmというサイズのフルイでふるって、フルイの中に残った珠が7.5ミリから8.0ミリの珠になるわけです。

フルイの中に真珠を入れて、フルイの側面を手でたたいてふるいます。フルイの下はザルなどで受けておきます。

このフルイの作業をしているときは、カシャカシャカシャという結構大きな音が辺りに響きます。

建物の2階で作業をしていれば、1階でもその音が窓から伝わって聞こえてきます。真珠屋さん特有の作業音です。大きな音と言っても、朝から晩までというわけではなく、10分とか20分ぐらいで大体終わりますので、近隣の方から苦情が来たという事は今までなかったです。

また大量の真珠をふるう(フルイ分けすることを「ふるう」と言います)ときは、フルイをたたく右手よりも枠を持っている左手が段々痛くなってきます。枠を持った手の指に、ずっと続けて衝撃が伝わるからかな、と思います。

次は選別

サイズがそろったところで、次の工程は品質で選別します。

机の上に柔らかい布を引いて真珠を置き、手と竹製のピンセットを使ってより分けていきます。

まずマキ(真珠層の厚みのことで、真珠の照りに深い関係がある)の薄いものと厚いものに分け、薄いものは丸と変形ぐらいに分けます。

次にマキの良いものは、形が丸と変形、キズが大きい、中ぐらい、小さいなど分け方は会社によって異なることもありますが、大体は形とキズで10~15種類ぐらいに分けていきます。

ピンセットは竹製のものが多いです。選別した珠はカルトンと呼ばれるプラスチック製の器に入れて他の珠と混ざらないようにします。

この作業は結構手間がかかりますが、連組み前の重要な工程となっているので、丁寧で正確に作業する必要があります。大量に真珠がある場合はさらにスピードも求められます。

連台の上で連組み

前の工程で選別されている真珠でも、よく見ると同じものは一つもないです。大きさ、形、キズの程度はほぼそろっていても、色はさまざまあって完全に同じ色はないので、なるべく似た色合いのものを並べていきます。

連組みをするための作業台のことを連台と言っています。

連台は直線状の浅い溝があって、10本のネックレスが並べられるようになっています。

色だけで合わせていっても、マキが違っていると連相(ネックレスとしての珠のそろい具合のこと)が悪く、きれいには見えません。マキ、つまり真珠層の厚みがほぼ同じか近い珠を並べていかなければなりません。

マキをそろえることで珠の照り、輝き、力といったものもそろい、ネックレスがきれいに出来上がります。ここの部分は作業する人の熟練度合いに掛かっていて、どのように連組みしているのか、説明は難しいところです。しかしネックレスが出来上がったとき、連組みが良ければきれいに見えるし、悪ければバラバラのように見えます。連組みの良し悪しはできたネックレスを見れば一目瞭然です。

昔、連組みの良くないネックレスのことを五色豆と言ったりしていました。一本のネックレスの中にいろいろな珠が混ざって、まるで五色豆のようだ、という意味なのでしょう。連組みの技術は、年数をかけて徐々に向上していくものだと思います。

再び穴開けが必要なこともある

連組み作業の中で、たまに両穴の穴開けが不良で、穴が貫通していない珠に出くわすことがあります。

連組作業の後に糸通しの作業があるのですが、その糸通しの段階で穴が貫通できていない珠があると糸を通すことが出来ないので、そういう珠はすぐに穴開けをします。

左手でチャックを締めるツマミを緩まないように押さえながら、右手で珠をドリルの方へ送っていく

写真のような穴開け機に、目指す位置にドリルの刃が当たるように、チャックという金具で真珠を固定しておいて、穴をきれいに貫通させます。

左手でつまんでいるのがチャックを締めるツマミです。右手は真珠を回転しているドリルの刃の方に送っていくハンドルです。

たまに真珠の中にドリルの刃の一部が入っていることがあります。これは当初の穴あけの時に、途中でドリルの刃が折れたためです。この場合はドリルで穴開けしようとしても、ドリルどうしが当たるので無理です。そういう場合はその真珠はもう使えません。

真珠を削ることもある

きれいな真珠でも写真にあるような、少しだけ突起が出ている珠の場合、その突起を削って丸くし連組みをしていきます。

少し突起のある真珠

突起のままネックレスを組み上げると、そこだけ珠と珠の間隔が広がってしまい珠の並びが不ぞろいになります。

ペンチで挟んだ真珠を、回転している砥石(といし)に当てることで削ることが出来る。

そこで突起のある真珠は、削ってきれいになる場合は、写真にあるようなグラインダーという機械で突起部分だけ削ります。指先で真珠をつまんで削っても良いし、持ちにくい時は真珠を挟む専用のペンチがあるので、それで真珠を挟み固定しておいてから回転している砥石(といし)で削ります。

グラインダーで削って突起はきれいに、なくなっている。

糸通し

連台の上で1本16インチの長さ分の真珠が並べられ、連相がそろったら連組みの完成です。

次はネックレス1本分の真珠の珠を、針を使って糸通ししていきます。針はビーズ針というかなり細くて長い針を使います。

ビーズ針は、まち針よりもかなり細い針です。

ビーズ針には、細い100番手の糸を通して輪っかにしておきます。これをみち糸と言います。

糸通ししているとき、このみち糸の結び目がほどけないように、「本結び(ほんむすび)」という結び方で結んでおきます。本結びの仕方は次の図に示すように結びます。

図のように本結びは2回丸結びをすればできます。

ネックレスに通す糸は20番手のナイロン製ミシン糸を使います。ミシン糸をみち糸の輪っかにUの字型に通します。

この20番の糸はビーズ針には通せません。みち糸に引っ掛けてビーズ針とつなげます。

こうして準備したビーズ針で真珠の粒を一つ一つ通していけば、二重の糸がネックレスの真珠の中を通っていきます。

ビーズ針で真珠を一つ一つ通していく。

写真は糸が通せたネックレスです。両端は糸を丸結びにしています。

2重の糸がネックレスの中を通り糸の両端を丸結びすれば糸通しの完成!

ロットをする

ネックレスが組みあがると色目、照り、マキ(真珠層の厚み)などを見て、ほぼ同じ品質のものを集めて何種類かに分けます。その同じ品質のネックレスを簡単には抜けないように、ひとまとまりに束ねます。この作業を「ロットをする(または、ロットする)」と言っています。

昔はネックレスの糸を全部まとめ、中に糸の入ったリリアンというビニール製のひもで、ぐるぐると巻いていき、固く束ねる作業をしていました。この作業は結構手間でした。私もロットの作業で5本や10本なら良いのですが、20本ぐらいを束ねる時は、きっちり束ねるのが難しくて苦労しました。

やっと束ねられたと思っても、よく見ると20本のうちの数本は1~2cm程糸が見えていて、出来上がった束からそのネックレスが抜けてしまいそうになっていて、最初からやり直しになることがちょくちょくありました。

最近はビニールチューブで簡単に束ねる方法が良く用いられていて、昔のやり方よりも作業が早くできます。

針金はピアノ線、ビニールチューブは一般的なポリ塩化ビニル製

写真にあるようなビニールチューブの中に、ネックレスの糸を全部まとめて通すのですが、その時に針金を二つ折りにした道具を使います。

(ビニールチューブの材質や調達の方法については、当サイトの別記事「真珠ネックレスのロット用ビニールチューブの調達方法」に解説しています。)

ネックレスの端をそろえて糸を一つに束ねて、その糸に針金を引っ掛けます。次に針金の反対側の端をビニールチューブに差し込み、チューブの中を通していきます。

針金を使う事で、全部の糸をチューブの中に通すことができます。

完全に針金がチューブを通り抜ければ糸はすべてチューブの中を通った状態になっています。

全部の糸がチューブの中を通りました。

この状態でビニールチューブを1回、丸結びすれば「ロット」は完成です。

チューブを1回結べばネックレスは抜けません。

ロットには連札という札を付けます。サイズや品番、ネックレスの本数、そして値段を書きます。

値段は算用数字ではなく、会社ごとに決められている符丁(ふちょう)と呼ばれる暗号で書かれることが多いです。例えば、「さかもとりょうますき」というひらがなに「1234567890」の数字を対応させるというルールを決めたとすれば、35,800円を符丁で表すと、「もりまきき」です。

多くの真珠屋さんは、自社でこのような暗号を決めており、値札を見ても他社の人には値段が分からないようにしています。

社内の営業の担当者は自社の商品の符丁を見れば、すぐにそれがいくらかは分かります。社内での会話の中でも、値段に関する話になると、この符丁が飛び交って、他社の人がその場にいても、何を言っているのか全くわかりません。商売で値段の話というのは、非常に重要なことなので、このような商習慣が真珠業界の中で出来たのだと思います。

ここまでで連組みの工程は完了です。

真珠の卸売りでは、通常こうした「ロット」という単位で販売、仕入れが行われています。小売りとはずいぶん違った形態となっています。

まとめ

真珠のネックレスを1本組むには、いろいろな道具を使い、さまざまな工程を経なければなりません。

そして何よりも重要なことは、連組みをする人の熟練度合い、技量が不可欠であるということです。一定の水準のネックレスが組めるようになるには、最低でも数年はかかります。日本人の器用さが求められる仕事なのではないかと私は思います。

以前、真珠の選別や連組を機械で出来ないか考えたことがありました。選別はある程度機械で出来そうだと思いましたが、連組はやはり機械では無理だなと思いました。私の知る限り、まだ機械で真珠の選別や連組はできるようにはなっておりません。

日本の特産品であるアコヤ真珠、そして日本人の職人による高い加工技術によって支えられているのが、このアコヤ真珠のネックレスであると言うことができると思います。


パールベテラン

神戸と真珠そして美を愛する60台こうべっ子

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