真珠って、ピンクやブルー、金色などいろいろな色があるけど、染色はされているのかな?という疑問をお持ちの方もおられると思います。
もし染色によってそのような様々な色を出しているのだったら、天然ではなく作り物ということで値打ちないなぁ、と思われるかもしれません。またナチュラルにはナチュラルブルー、ナチュラルグレー、ナチュラルゴールドなどありますが、どれも希少なため価値が高いです。
染色している、していないという点に焦点を当て、アコヤ、南洋、タヒチなど真珠全般について、宝石の加熱処理とも比較しながら解説させていただきました。
先ず、アコヤ真珠(養殖真珠)の通常の加工工程は、穴あけ、しみ抜き(漂白)、調色、研磨仕上げ、となっています。だから大部分のアコヤ真珠は漂白と調色(軽度の染色)はされているのです。
3つの分類の最初の一つは、この調色も漂白もしていない真珠で、「ナチュラル」と言います。
二つ目は、漂白だけしていて、調色をしていない真珠を「無調色」と言います。
そして三つめは、漂白と調色がされている通常の真珠という風になっています。
穴あけと研磨仕上げしかしていない真珠であるナチュラルは、薬品処理をほとんどしていないため真珠の表面が荒れることなく、珠のテリが非常に良いのが特徴です。
色としては主にブルー系(ナチュラルブルー)、グレー系(ナチュラルグレー)の真珠が多く、しみ抜き(漂白)をすると、せっかくのきれいな天然のブルーやグレーの色が落ちてしまうので漂白をせず、研磨のみで完成となっています。他に白(ナチュラルホワイト)、ごく薄いピンク(ナチュラルピンク)、金色(ナチュラルゴールド)などもあります。ナチュラルは希少性と美しさにより価格は高めになっています。
(同じブルーやグレー色のネックレスでも、染色されたものもあり、ナチュラル品は染め物の5割高ぐらいはするでしょう)
無調色の真珠は加工工程において漂白まではしますが、調色(軽度の染色)をしていません。調色をした方がもっときれいになる珠を、あえて無調色でとどめて完成としているのです。
色を入れるという加工をせずに、ある意味で綺麗さを犠牲にしてでも「ナチュラル」に近い真珠にしようとする非常にこだわりの強いアイテムとなっています。よくマニア的という言葉がありますが、無調色はそんな感もあります。又はあまりピンクの色を好まれない人が求められるのかもしれません。いずれにしても、真珠全体に占める割合は1割以下だと思います。
ナチュラルと無調色を除けば、すべてのアコヤ真珠はしみ抜き加工の後、調色がされています。
この写真は7.5ミリ珠で、調色されたものと、無調色のものとを並べて撮影したものです。ちょっと見にはほとんど分からないぐらいの違いですが、外側の方がわずかにピンクが強く見えます。
このように無調色の真珠は、やや白っぽいイメージで強いピンク色のものは無く、清楚でおとなしい感じの真珠となっており、通常品の方が淡いピンクのアコヤ真珠らしさが出ています。
化学的に言えば「調色」も染色です。ではなぜ染色と言わずに「調色」という言い方をするのか。
アコヤの本真珠は人工的ではなく、自然の海からアコヤ貝を使い養殖によって出来上がるものです。決して人工的な作り物ではなく、より天然に近いものです。そういうイメージを大切にしているので「染色」という言葉を使わないようにしているのだと思います。
実際、真珠の加工工程で「調色」に入っても真珠の色は大きな変化はしません。白っぽい珠がやや淡いピンクに、淡いピンクの珠は、もう少しピンクが強められ、ホワイトブルー系の珠なら上品なブルーピンク系の珠へと変化します。
また、私自身の経験から言って、もともとややグリーン系の色の真珠は調色加工をしても、あまり変化が無いです。またクリーム系の色の真珠も染まりにくいです。
「無調色」及び「ナチュラル」以外の真珠には、すべて「調色」加工が施されています。みなさん、よくご存知のM社の真珠も同様です。
南洋真珠やタヒチ真珠は、通常は「調色」も「染色」もないです。(一部にちゃんと表示をしたうえで「染色」した金色の南洋珠もありますが。)
その理由は、真珠のサイズが大きいために、見た目の存在感の強さなどにより、手を加える必要性が無いからであると思われます。
その点、アコヤ真珠には南洋真珠やタヒチ真珠のようなボリューム感はない代わりに、調色で仕上がったあの淡いピンク系の色からくる、繊細で上品な美しさがあります。それがアコヤ真珠独特の魅力となっているのです。
実は宝石もその多くが真珠と同様に調色にあたる別の加工が施されています。その加工は「エンハンスメント」と呼ばれています。
ルビーやサファイヤではよりきれいな色とするため、加熱処理が一般的に行われています。しかしその処理は宝石本来の美しさを無理なく引き出す若干の処理で、天然石の価値をとどめている、とされています。
真珠の中でも特に品質が良いとされている花珠では、中には無調色をうたったものもありますが、染色ではなく調色されたものが、ほとんどとなっております。なぜかと言うと、ナチュラルでピンク系の色の花珠があっても、しみ抜き(漂白)、調色をしてからネックレスを組む方が珠の色合いや品質を揃えやすいという事情があるからです。
無調色の真珠は調色品と比べると、おとなしい出来栄えとなってしまうので、あまり多くは作られていません。
花珠である、無しに関わらず「調色」は一般的に認められた加工で、養殖のアコヤ真珠、本真珠として問題なしとされています。
調色に関しては、業界の中でも昔から様々な意見があり調色は一切しないという極端な会社もあります。しかし、真珠も宝飾品である以上、綺麗なものを目指したい。一方で消費者をだますような過度で無理な加工をするのも商道徳に反する。
なので、ズバリ言ってしまうと両者の間で誰もが納得をし、また商業としても成り立つようなところが落としどころとして認められ、現在に至っているのだと思います。
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