アコヤ真珠の加工卸売業における経理では、棚卸の評価で総平均法を採ることが多い。
その理由については、別記事の「アコヤ真珠加工卸売業の期末棚卸!総平均法による評価を解説」に詳しく解説していますので、そちらを参照してください。
総平均法を採用している場合は、日々の取引においてアコヤ真珠の目方の増減をすべて記録しておかなければなりません。この点が他の業種にはないアコヤ真珠加工卸売業独特の経理の仕方ということです。
以下、その点を含め経理業務で注意すべきところを解説します。
アコヤ真珠を売ったり買ったりした場合、必ず取引したアコヤ真珠の目方を記録しておかなければなりません。何匁(もんめ)入ってきて、何匁出ていったか(真珠の取引は匁という重さの単位を使っています)という目方の出入りを商品出納帳に記録しておく必要があります。
そのためには売り上げたとき発行する納品書、仕入れたときに先方から頂く納品書にアコヤ真珠ならその目方を記入しておかなければなりません。
ところが他社から真珠を仕入れたとき、その会社が発行する納品書に真珠の目方が記載されていないことがあります。例えばネックレスの本数、単価、金額しか書かれていない場合があります。
その会社は目方管理は商品出納帳でしていて、納品書から商品出納帳に転記の際に真珠のサイズから目方を算出して記載しているのだろうと思われます。
そういう場合は仕入れた真珠の目方をこちらで測るか、またはその真珠のサイズを確かめておくことが必要です。サイズが分かればネックレスでもバラ珠でもその目方が計算できるからです。
(例)6.5~7mmのサイズのネックレス10本なら 7.1×10=71匁 という事が分かります。
各サイズ毎のネックレス1本の目方の表は当ブログの「真珠の加工卸販売業の営業はどんな仕事?値段が分かれば一人前」の記事の中にあります。
このような納品書ならアコヤ真珠の目方がはっきりと書かれており、経理の処理が楽です。
また南洋真珠とアコヤ真珠両方を仕入れた場合は、仕入帳にはアコヤ真珠だけの目方、金額、そして南洋真珠の金額と2行に分けて記帳しておかないといけません。
ここではアコヤ真珠は総平均法、南洋真珠は別管理で一品管理という前提ですので南洋真珠の目方は不要です。決算時に南洋真珠の仕入金額の集計が必要になりますが、仕入帳を見れば南洋真珠の行が分けられているので集計しやすいです。
私の会社では経理部門は責任者1名と補助者が1名居ます。この体制なら以下の4ステップを踏んで、決算に必要な仕訳データをミスなく完成させることができ、税理士さんの方へ渡せます。
(1)経理責任者が手書きの振替伝票を作成する。
(2)補助者が振替伝票のデータを経理ソフトに入力する。
(3)再び経理責任者が経理ソフトに入力されたデータをチェックし、必要があれば修正する。
(4)経理責任者が期末に全データを、税理士へメールで送信する。
経理ソフトはいろいろありますが、有名でよく使われているのは弥生会計、会計王、MJSかんたん!会計などだと思います。どの経理ソフトを採用するかは、税務を依頼している税理士事務所と相談して決めるのが良いでしょう。
パソコンで何でもできる今の時代に、手書きの振替伝票を使うというのはなぜか?
経理で一番重要でかつ難易度の高い仕事は「仕訳」ではないかと思います。正確な仕訳データをパソコンに入力するには、責任者自ら入力するか、仕訳は責任者が振替伝票に手書きで記入して、後で補助者に振替伝票をパソコンに入力させるかのどちらかだと思います。仕訳を責任者がして、パソコン入力を補助者に任せることで、入力にかかる時間を他の業務に回すことができます。
補助者がデータ入力する際に注意を要するのは、消費税の区分の選択です。次の段落で説明しますが、雑費など同じ科目でも0%、8%、10%と区別が必要な場合があり、私の会社では間違わないように、振替伝票の科目のところに0%とか8%というゴム印を押すようにしています。このようにして仕訳係と入力係を分けて経理業務をすれば、仕事の正確性の確保も効率化も実現できます。
もし経理は一人だけでするのなら手書きの振替伝票は不要で、責任者自ら経理ソフトへの入力をすれば良いです。ただその場合は責任者の作業時間は、その分だけ増えます。
日頃私が経理で仕訳をしていて、よく出てくる注意点があるので書き出しておきます。
経理ソフトで経費を入力する場合、不課税、8%、10%と選択肢が出てくるので下記のように選ぶようにしてください。
・慶弔費は不課税。
・厚生費の内飲食物は軽減税率の8%を選択する。
・所属組合の年会費は雑費で不課税を選択する(業界にはさまざまな入札会があり、多くの会社が加入しています)
日々の仕訳データは経理ソフトで入力、集計できますが、アコヤ真珠の総平均法による期末棚卸金額の計算は経理責任者が計算しないとできません。
上にあるような計算書を作成します。まず期首在庫と期中仕入の金額、付加価値額の各数値を表の各項目に入れて総平均単価を算出します。その総平均単価に期末目方を掛け、南洋などの棚卸額を加えて期末棚卸金額を求めます。
この計算方法の詳細は当ブログの別記事「アコヤ真珠加工卸売業の期末棚卸!総平均法による評価を解説」に詳しく解説しています。
期末棚卸金額の計算書が作成出来たら、他の決算のためのデータとともに税理士さんの方へコピーを渡します。
前日の売上と仕入れの伝票を元にその仕訳を振替伝票に記入し、売上帳、仕入帳に目方、品名、金額を記帳します。
この売上帳、仕入帳というのは、やはり手書きで作っておく方が、パソコンを立ち上げなくてもすぐにチェックできて、商売上も便利で役に立ちます。どんな商品を、いつ、どの会社へ売ったか、どの会社から買ったか、支払いをしたのはいつだったか、未払いはどのくらいか、すべて一目でわかるので便利です。顧客からの注文で、先月こちらから購入したネックレスと同じものを○○本だけ欲しいと言われたら、売上帳のその顧客のページを開く。先月のところに日付、金額が書かれている。その日付の納品書の控えを調べれば販売した商品の詳しい内容、値段などが判明します。
また、今月の仕入れ先に対する支払いの計画を立てるのにも、各仕入れ先のページを見れば買掛金の最新の残高が出ているので、そのデータをもとに資金繰りができます。
商品出納帳へのアコヤ真珠の目方や、南洋真珠の出入り数量、金額の記帳は1カ月分をまとめて、翌月の10日ぐらいにします。この作業は売上と仕入れの伝票(納品書)からの転記作業でできます。
経費関係の領収書も未処理ファイルにいったん保存しておいて、1週間とか10日分まとめて後日仕訳すれば良いです。(もち論、毎日仕訳しても良いです。)
現金や手形、銀行振り込み関係で現金、預金が動くときは極力その日の内に仕訳をする。以前に取引先の営業マンが結婚するということでお祝い金を3万円支出したとき、その仕訳をするのを忘れていて、現金残高が合わなくなったことがありました。慶弔費は領収書がないので後で調べても分かりにくく、思い出すまで苦労しました。時間がたってしまうと記憶も薄れ仕訳を間違う可能性が出てくるので、現金や預金など金銭が絡む取引については、悪くても翌日には仕訳するようにした方が良いです。
目方の記録が必須であることを中心にして、真珠加工卸売業の経理の仕方について日頃経理業務をしている中で大事だなと感じたことを書かせていただきました。