一般的なアクセサリーよりもワンランク上で、しかも値段も手ごろなパールネックレスを手作りしたい!という方に向けて、ここではアコヤ真珠を2個と、半貴石のカーネリアンと染めの淡水真珠を使ったおしゃれなネックレスの手作り方法を解説しています。
留め金はマグネットクラスプを使うと付け外しが非常に簡単で超お勧めです。マグネットクラスプがどれ程お勧めなのか、パールネックレスに使われてきた留め金(クラスプ)の変遷の話から始めたいと思います。
パールネックレスに使われるクラスプ(ネックレスの両端をつなぐ金具)は時代とともに、主流となるものが変わってきています。
話は昭和の前半ぐらいから始まりますが、皆さんも年配の方や宝飾品に詳しい方ならご存じかもしれませんが「亀の子クラスプ」というのが最初は主流でした。私が30数年前に業界に入ったときにはすでに過去のものという感じでした。
その後に「薔薇のクラスプ」がパールネックレスに使われる時代が20年ぐらい続きました。
そして次に登場したのが「ビーンズ型クラスプ」または「差し込み式クラスプ」というタイプでこれは2021年の現在も主流で使われています。
これらのクラスプの素材はすべてシルバーが大部分となっています。プラチナ、ホワイトゴールド、イエローゴールド製のクラスプもありますが、高価になるためあまり多くはないです。
ではまず、亀の子クラスプから説明を始めます。
亀の子クラスプは、おそらく昭和20~40年ごろの主流クラスプであったと思います。しかし今でも古いパールネックレスの修理依頼で亀の子クラスプを見かけることもあります。
だからその使い方を知っておくことは無駄ではないと思います。
写真ではクラスプのみ撮影しましたが、本体の左側にはネックレスがつながっていると想像してください。Cの字型の金具の右側にもネックレスがつながっているという想定です。
この亀の子クラスプ本体に引っ掛け金具を差し込んで留めるのですが、差し込み方が分かりにくいです。私も若い時に初めて上の写真にあるような亀の子クラスプ単体を見たときは、その外し方が分かりませんでした。もち論留め方も分かりません。
まず外すときは写真の右側にあるCの字型の部分を親指と人差し指ではさんで少し力を加えると、Cの字型の引っ掛け金具がゆるんで本体から少しだけ離すことができます。
そのまま右に引っ張っても外れないので、本体端の支柱部分をよける様に回しながら外します。
だからクラスプを留める時はこの逆で、引っ掛け金具を本体端の支柱部分に引っ掛けてから、引っ掛け金具を本体の奥の方へと押し込んでいき、カチッと音がするまで押し込んで留めます。
上の写真の状態からもう少し引っ掛け金具を、本体の方に(左へ)押し込めばカチッと音がして留まります。
私の知る限りでは20年ぐらい前(平成10年ぐらい)までは「薔薇のクラスプ」というのがパールネックレスを作るとき一番よく使われていました。
このクラスプはバラの花びらのデザインで上品なイメージがあり、パールネックレスには非常によくマッチしていたのでかなり長い間主流のクラスプとなっていました。クラスプの上面の真ん中には芯が1本立っていてそこに5ミリぐらいの真珠を飾りに付けて使用します。
その一つの真珠は、もち論ネックレスの色合いと合わせた真珠を選んで付けます。シルバー製の金具だけでは出せない、上品さと花のような優しさの出た仕上がりです。
女性がパールネックレスを首に着けると前から見てきれいなのは当然ですが、後ろから首元を見ると薔薇のクラスプが見えてそれもおしゃれさを演出しています。
薔薇のクラスプの着け方
最後までカチッと、はまればハンドルのばねの力でクラスプは留まるようになっています。
ただこのクラスプを首の後ろで留める作業が、目で確認ができないところで手探りでするため、なかなか一度ではうまくいきません。女性がパールネックレスを首に着けようと両手を後ろに回して何度か失敗しながらやっとできたという場面は昔よく目にしました。
私も家内がやりにくそうにしているのを見たとき、後ろではなく前で胸元の方でクラスプを留めて、できてからクラスプを首の後ろに回せば楽にできるよとアドバイスしたこともありました。
ビーンズ型クラスプはほとんどがSV製でロジュームメッキされていて黒さびになりにくくしてあります。
ビーンズ型クラスプは本体(メス)と差し込み金具(オス)を、ただ真っすぐに差し込めばカチッと音がして留まります。
ビーンズ型クラスプの外し方
それでは本題のマグネットクラスプですが、マグネットクラスプはオスとメスを近づけると、磁石の作用で自然につながってくれるので使い方の説明は不要だと思います。
マグネットクラスプは完全なイミテーションによるアクセサリーなどにはよく使われているようです。
しかし私が今回提案したような本真珠と半貴石や淡水真珠を組み合わせたパールネックレスに、マグネットクラスプを使用するというのは新しい試みではないかと思います。
マグネットクラスプならビーンズ型クラスプよりもさらに着け方が楽になるので、遊び心があるネックレスにはピッタリではないかと考えました。また価格もビーンズ型の3分の1ぐらいでコストを抑えることができます。
これらの材料でパールネックレスを作ると、全長はちょうど標準的長さの約16インチです。41~42cmぐらいです。
手作りするのに必要な道具としては、カシメ用の先の細いペンチ、ニッパー、真珠の穴を大きく開けなおすための穴開け機です。穴あけの機械がない場合は、ピンバイス(手でちょっとした穴あけをする器具)を使い、手で0.8ミリのドリルを回して開けることもできます。(穴径を広げる作業があります。)
下の写真にあるように3ミリと7ミリの淡水真珠、そしてアコヤ真珠(白の大きい珠)、カーネリアンをワイヤーに通していくのですが、
両脇はカミツブシ、淡水真珠、シリコンクッション、淡水真珠、シリコンクッションという順番になるようにしてください。
ここではクッションは片側に2つですが、3つにしても良いでしょう。
通し作業の最終端のところは、まず淡水真珠、クッション、淡水真珠、クッション、淡水真珠、そしてカミツブシとマグネットクラスプの片方をワイヤーで通します。
(写真では見えにくいかもしれませんが、3つの淡水真珠の間に小さなクッションが1つずつ入っています。)
次に、下の写真にあるようにくるっと折り返して、ワイヤーをもう一度カミツブシから淡水真珠、クッション、淡水真珠、クッション、淡水真珠と通していきます。
ワイヤーの径を測ると0.3から0.35ミリぐらいあったので、淡水真珠の片側3個(両側で6個)は0.8ミリの穴開けをしました。
通常、淡水真珠は0.6ミリの穴が開いている場合が多いので、0.8ミリで開けなおす必要があります。
材料のところにも書きましたが、穴あけの機械がない場合は、ピンバイスを使って穴を開けることもできます。
クラスプ側のカンとカミツブシの間に、隙間があくことのないようにしっかりとワイヤーを引っ張ることが大切です。
次にカミツブシをペンチではさんでカシメる(押しつぶす)。
ワイヤーをカットするときは、クッションが少し圧縮されるぐらいワイヤーを引っ張りながら、珠をカミツブシの方へ押してから極力ワイヤーの根元で切るようにします。
ワイヤーのカットされた端が、珠の中に入り込んで見えないのが理想です。
最初にクラスプを付けたのと反対側の端にある、3個の淡水真珠も穴を大きくしています。通せたらワイヤーを引き絞っていきます。
この最後のカシメが一番大事なところです。ここでゆるみが有るままカシメをすると、隙間があいてワイヤーが2~3ミリ程見えてしまうようになるので失敗です。
クッションが少し圧縮されるぐらいに、強めにワイヤーを引っ張るのですが、この時はワイヤーをペンチで挟んで引っ張ってください。手で引っ張っても、ペンチ程には強く引っ張れません。
十分にペンチでワイヤーを引っ張ってすべての部品の隙間がなくせたら、ペンチは離してワイヤーを指で引っ張り固定しておいて、カミツブシをペンチでカシメます。
最後の作業は余分のワイヤーを切ることです。珠と珠の間にニッパーの先端部を入れて、ワイヤーを強めに引っ張りながら極力根元でワイヤーを切ります。
上の写真にあるようにマグネットクラスプは約1センチぐらいの距離に近づけると引っ付こうとし始めます。
真珠には上品さ、高級さがありますが、半貴石のカーネリアンと染めの淡水真珠を組み込むことで遊び心をプラスして、気軽に使う事のできるパールネックレスが出来上がりました。
留め金はマグネットクラスプなので、付け外しがとても簡単でストレスがないです。
ここでご紹介したワイヤーとカシメ金具を使ったネックレスの作り方は、今回のマグネットクラスプでなくても、他の大部分のクラスプでも全く同じです。だからこの作り方をマスターすれば非常に応用範囲が広いと思います。
ワイヤーが緩まないように強く引っ張って、カシメた後、珠の際でワイヤーをカットするのがポイントです。
趣味でネックレスを手作りされる方も多くおられると思いますが、この技術はぜひ習得されてほしいと思います。